2021年06月01日
サステナビリティレポート 特集
まちづくりを通じた社会課題の解決「Hareza池袋」
2020年7月、東京都豊島区の中心・池袋駅東口から約300mの場所に、当社が共同事業者の株式会社サンケイビルとともに開発、運営する新しい大規模複合施設がグランドオープンしました。
Hareza池袋
2020年7月、東京都豊島区の中心・池袋駅東口から約300mの場所に、当社が共同事業者の株式会社サンケイビルとともに開発、運営する※新しい大規模複合施設がグランドオープンしました。
池袋の新たなランドマークとなる地上33階建の「Hareza Tower(ハレザタワー)」(オフィス棟)、約1,300名が宝塚歌劇やミュージカルなどを鑑賞できる多目的ホールを備えた「東京建物 Brillia HALL(ブリリアホール)」(ホール棟)、「としま区民センター」と、3棟に囲まれた中池袋公園からなるこのエリアは、おめかしして出かける特別な場所を表す「ハレ」の場と、多くの人が集まる場所を意味する「座」を組み合わせて「Hareza(ハレザ)池袋」と名付けられました。
Hareza池袋は今後、非日常を体験できる劇場都市として、多様な文化を世界に発信する新たな文化発信拠点となり、池袋に新たな賑わいを生み出すことが期待されています。
- Hareza Tower、東京建物 Brillia HALLの開発・運営および中池袋公園の運営、Hareza池袋を中心としたエリアマネジメントを担当。
所在地 |
東京都豊島区東池袋一丁目18番1 |
階数 / 高さ |
地上33階地下2階 / 約158m |
延床面積 |
約68,600m² |
竣工 |
2020年5月 |
所在地 |
東京都豊島区東池袋一丁目19番1 |
階数 / 高さ |
地上8階地下1階 / 約41m |
延床面積 |
約10,700m² |
竣工 |
2019年4月 |
消滅可能性都市から持続発展都市へ
豊島区は、新宿、渋谷と並んで「東京の3大副都心」とも称される東京有数の商業エリア「池袋」を有する地域です。池袋駅はJR東日本、西武鉄道、東武鉄道、東京メトロの4社9路線が乗り入れる日本有数の巨大ターミナル駅であり、一日の乗降客数は平均264万人、日本第3位を誇ります。商業エリアとして多くの昼間人口を集める反面、ファミリー層の減少などの課題が問題視され、2014年には少子化や人口移動が原因で、将来、維持できなくなる可能性がある「消滅可能性都市」※1に、東京23区で唯一該当すると指摘されたこともあります。逆境をバネに持続発展都市を目指し、豊島区はスピード感をもって、待機児童解消、公園整備などの「女性や子どもにやさしいまちづくり」を進め、その結果、2017年には「共働き子育てしやすい街」全国総合ランキング1位を取ることができました※2。
豊島区が新庁舎建設のための財源を捻出することを目的に、旧庁舎と豊島公会堂の跡地に大規模複合施設を開発するプロポーザルを開始し、当社が参加表明したのも、消滅可能性の指摘を受けたのと同じ2014年のことでした。
- 民間有識者による政策提言機関「日本創成会議」が2014年5月に打ち出した考え方。
- 日経DUAL×日本経済新聞による自治体調査より。
地域の文化資産を活用し、新たなまちづくりの方向性を提案
豊島区はプロポーザルを通じ、多様な文化に彩られた賑わいのまちを実現する提案を求めていました。当社は南池袋二丁目A地区市街地再開発事業(Brillia Tower 池袋)に参加した経験を活かし、2015年1月、「誰もが輝く劇場都市」をコンセプトに、ビジネス拠点となる大規模・高規格オフィス、文化創造を担う劇場、賑わいを生み出す飲食店舗で構成した大規模複合施設を提案し、優先交渉権を獲得、7月に開発事業者に選定されました。
新庁舎建設の財源については、開発エリアに対して76年6カ月にわたる長期の定期借地権を設定し、地代を一括して前払いすることで、豊島区は本地代から新庁舎建設費を捻出し、実質的な財政負担なく新庁舎建設を実現しました。
また、Hareza池袋は豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市構想」のコンセプトである「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」を実現し、同構想のシンボルプロジェクトとして位置付けられました。
歴史・文化を礎に、8つの劇場が実現する「文化創造のまち」
Hareza池袋は8つの劇場を有し、江戸時代から続く「歌舞伎」などの伝統芸能や宝塚歌劇、ハイカルチャーをはじめ、マンガ・アニメ・コスプレなどのサブカルチャー、バーチャルとリアルが融合する最先端のアート・カルチャーまで、多様な公演やイベントが予定されており、多様な文化資源を世界に向けて発信する芸術文化拠点と位置付けられています。世代を問わず、自分の思うままに楽しむことができるよう、豊島区およびテナント様とともに、様々なジャンルの文化を同時多発的に発信していきます。
新たなオフィスマーケットを創出し、まちの多様性を高める
当社が開発計画を検討する際には、当該立地の特性等を詳細に分析し、その場所のポテンシャルを最大限発揮させることを意識しています。池袋駅周辺は、Hareza池袋開発以前は、サンシャインシティ以降大規模オフィスビルの開発がなく、オフィス街としての印象は薄く、マーケットでもあまり認知されていませんでした。
当社は、池袋の交通利便性、アート・カルチャーに代表される街の魅力、職住近接の流れにおける後背人口の多さなどのポテンシャルを評価しオフィスの開発を決断しました。また、それらをリーシングにおいても訴求した結果、コロナ禍における竣工ではありましたが、Hareza Towerの契約率は竣工時点で100%に達するなど、池袋の新たなオフィスマーケットの創出を通じ、まちの多様性と魅力の向上に貢献することができました。
周辺施設への人の流れを生む「回遊性の高いまち」
池袋エリア全体の回遊性を高めるために、Hareza池袋だけで完結するのではなく、Hareza池袋に来訪した人々が周辺の施設を利用し回遊することで、まち全体がより活性化することを目指しました。
具体的には、豊島区が提唱する「アフター・ザ・シアター」の考えに呼応し、Hareza池袋での観劇や文化鑑賞の後、その余韻を楽しめる場として、すでに池袋に豊富にある飲食店を利用してもらうよう、あえて飲食店舗はボリュームを抑えた施設計画としました。
安全・安心で、「持続可能なまち」
地域の防災拠点として安全・安心を支える
災害に備えた安心できるまちづくりは、日本のまちづくりにおける最重要課題です。当社は豊島区と帰宅困難者対策に関する協定を結び、Hareza Towerや東京建物 Brillia HALLにて帰宅困難者を受け入れるだけでなく、中池袋公園や、豊島区が運営するとしま区民センターとも連携した防災拠点として、安全・安心なまちづくりの一端を担っています。
帰宅困難者の受け入れに備え、水・食料、簡易トイレや毛布などの備蓄のほか、災害用かまどベンチやマンホールトイレも備えています。Hareza Towerおよび東京建物 Brillia HALLでは、帰宅困難者が発災から交通機関が再開し帰宅可能になるまで最大3日間の滞在が可能です。また、施設管理者として、帰宅困難者に対する適切な情報提供を行えるよう、豊島区との間で適切な連絡体制を構築しています。
超高層複合用途ビルで初の環境性能最高ランクを実現
Hareza Towerは、国内最高レベルの環境対策を行っています。空調や照明などにテナント様がご不便を感じることがないよう、快適性と環境負荷低減を両立するように設計段階から配慮しています。高効率機器の選定、事務所専用部における照明設定、空調の制御など適正な設計条件を検討することで、年間エネルギー消費量を約50%削減※1、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の建築物全体評価※2で最高ランクの星5つ、事務所用途の部分評価※1では高さ150m以上の超高層複合用途ビルで初の「ZEB Ready」認証を取得しました※3。
また、Hareza TowerではBELS認証のほか、株式会社日本政策投資銀行による2019年度版「DBJ Green Building認証」※4において最高ランクの星5つを取得、建築環境総合性能評価システム「CASBEE」の「CASBEE建築(新築)」※5においても最高ランクのSランク性能を達成しています。
- 同水準の標準的な建物と比較した場合。
- エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)Ver.2.7.1(通称WEBPRO)を使用。
- 一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページ、BELS事例データ一覧による(2019年6月末時点)。
- DBJ Green Building認証:日本政策投資銀行が創設した、環境・社会への配慮がなされた不動産の取り組みを評価する制度。
- CASBEE建築(新築):戸建住宅を除く建築物一般について、新築時における設計内容に基づいて省エネルギー性や環境負荷を評価する制度。一般社団法人建築環境・省エネルギー機構が管理。
一般社団法人の組成により、まちづくりを加速
2018年6月、当社は、Hareza池袋および周辺地域の賑わい創出や魅力向上に寄与する活動に注力する「一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメント」を設立しました。
同法人は、Hareza池袋内のイベントスペースを活用して既存イベントとの連携や新たなイベントの誘致などを行い、池袋に根ざした文化に新しい要素を組み合わせることで、エリアの賑わいと魅力を一層向上させるよう努めています。また、豊島区が所有する中池袋公園の指定管理業務も受託し、維持管理業務のほか、イベントの開催やカフェの整備・運営も行います。行政資産である道路や公園の更なる有効活用に取り組むとともに、8つの劇場や近隣企業、地元町会・商店会とも連携しながら、エリアの価値向上につながるエリアマネジメント活動を行っていきます。
名称 |
内容 |
開催年月 |
池袋アニメタウン |
アニメ・マンガを通して多様な楽しみ方・文化を |
2019年11月 |
Harezaの日 |
Hareza池袋のグランドオープンイベントとして |
2020年8月 |
東京建物グループの「社会課題解決に貢献するまちづくり」
こうしたHareza池袋開発によるまちづくりは、当社の長期ビジョンにおける「社会課題解決に貢献するまちづくり」の考え方に基づくものです。
建物をつくることは、まちづくりの始まりであって、終わりではありません。開発エリアの価値が向上することは、ひいては、当社の事業活動の持続的な成長にもつながります。
当社は、今後も様々なステークホルダーと連携しながら、社会課題の解決とまちの魅力向上に向けた取り組みを進めてまいります。
近年の開発事例
東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業(八重洲プロジェクト)
東京駅八重洲口の正面に位置する区域の市街地再開発事業。国際都市東京の陸の玄関口として、東京全体の更なる賑わい創出と国際競争力の向上に貢献します。
Brillia Towers 目黒
JR山手線目黒駅の駅前の「住宅」「商業」「オフィス」の複合再開発。駅前の賑わいと緑豊かで潤いのある環境を両立させています。
東京スクエアガーデン
東京メトロ銀座線京橋駅駅上部分の再開発。最先端の省CO2技術の導入に加え、日射を遮る大庇の設置など、様々な環境対策に取り組むことで、国内トップレベルの環境性能を有しています。