人を中心に据え、付加価値を提供することで、
社会課題の解決と企業としての成長を
より高い次元で実現する
東京建物株式会社
代表取締役社長執行役員
人を中心に据え、付加価値を提供することで、
社会課題の解決と企業としての成長を
より高い次元で実現する
東京建物株式会社 代表取締役社長執行役員
人を中心に。その人が今も将来も幸せに生きることを目指して
当社グループは、2030年を見据えた長期ビジョンに掲げる「次世代デベロッパー」として、建物に住まう人や集う人が、今はもちろん、将来にわたり安心して働き、暮らすことができる建物の開発や管理に尽力しています。近年のZEB・ZEHやグリーンビルディングなどに代表される環境に配慮した建物の開発や管理など、様々なサステナビリティの取り組みを推進しています。
社長に就任してから1年の間に私が強く実感したのは、お客様のサステナビリティ、とりわけ環境面に対する意識が急速に高まっていることです。当社が環境に配慮した建物を提供し、お客様がそれに対して付加価値を感じてくださっている確かな手ごたえを感じています。
その象徴的な事例が、2024年12月に竣工した「Brillia 深沢八丁目」です。同プロジェクトは、『ZEH-M』基準に適合する大規模建築物として日本で初めて竣工した分譲マンションで、住棟全体で一次エネルギー消費量削減率100%以上を実現しました。環境性能を高めることでそのコストが販売価格に一定程度反映される側面がありますが、販売は極めて好調に推移しました。こうした結果は、環境性能が高いということがお客様に高い付加価値として評価されていることの表れと捉えています。
また、Brillia 深沢八丁目に限らず当社グループでは、従前からBrilliaの分譲マンションにおける廃棄物削減に向けた取り組みとして「すてないくらしプロジェクト」を進めており、その一環として、空間デザインの力で分別や衛生環境の課題解決を目指す「GOMMY」も展開しています。一見すると、小さな取り組みに思われますが、マンションの管理組合の方々と協議しながら、実際にそこに住む人にとってよりよい環境をどう作っていくか、この過程が広く持続性に繋がるのだと捉えています。私たちは、時代の変化に応じて持続的に価値ある建物の提供に尽力しており、その実現には、お客様に価値をご理解いただくことが不可欠です。特に環境分野においては、提供する価値と対価の関係を丁寧にお伝えし、ご納得いただくことを重視してきました。「良いものだから」と一方的に提案するのではなく、お客様ご自身にその価値を見出していただくことが重要であると考えています。こうした提供する価値と理解醸成のプロセスこそが、私たちの取り組みの根幹を成すものであり、目指す姿の本質であると捉えています。
そしてこれは、当社グループの事業すべてに共通します。オフィスビルなら働く人、商業施設なら利用する人、必ず中心には人がいます。サステナビリティとは、環境対応を進めることにとどまらず、人を中心に据えて、よりよく生きるための価値を高めていく取り組みなのです。私たちはその価値づくりに伴走する立場にあることを、改めて強く認識しています。
当社グループの根幹にある考え方を統合し、一本の軸を通したサステナビリティ方針
当社グループは2025年12月に「東京建物グループ サステナビリティ方針」を制定しました。以前より当社グループが推進してきたサステナビリティに関する様々な取り組みの根幹にある考え方を統合することで一本の軸を通し、グループ全体の方向性を一致させることにより、これまで以上に効果的な実践につなげていくことがこの方針の狙いです。
この方針は、「地球と共生する事業活動を通じて、持続可能な環境の実現に貢献していきます。」「『人』に寄り添い、だれもがいきいきと暮らせる社会の実現に貢献していきます。」「健全で公正な企業活動を通じて、持続的な企業価値の向上を実現していきます。」という3つのテーマで構成されています。これらは、個別に存在するものではなく、人を中心にして不可分のつながりを有するものです。まず、人は都市で生活してもコンクリートの中だけで生きているわけではなく、自然環境に癒しを求めたり、また、自然環境から災害を受けたりする場合もあることから、都市の利便性を享受しつつ、地球環境、自然環境といかに共生していくかの重要性を掲げています。次に、働く、住まう、体験する、集う時には、いつも「人」が主役であり、「人」に寄り添って、職場環境を整えていくことや社会におけるニーズを満たしていくことを方針として掲げました。さらに、これらを支える基盤として、当社グループの企業活動そのものが健全かつ公正であることにより、すべてのステークホルダーにとってのいい会社を目指すことを掲げています。この方針は制定して満足するものではありません。多様な手法を活用してグループの役職員に浸透させることで、グループ一体となってより高い次元で実践してまいります。
「TOFROM YAESU」を中心としたYNKエリアにおける様々なサステナビリティに関する取り組み
当社グループは、「TOFROM YAESU」をはじめとして、東京の八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアにおいて複数の大規模再開発を推進しています。
私たちは、元々YNKエリアに本社を置き、事業を営んできました。YNKエリアは歴史を紐解くと、江戸時代には多様な地域から食材などが運び込まれる河岸が発達し、商いのまちとして発展した場所です。そうした背景から、YNKエリアには古くから続く飲食店や多様な店舗が集積し、通りを歩けばその土地ならではのにぎわいを感じられるエリアが形成されてきました。
こうした歴史を踏まえ、当社グループではYNKエリアにおいて「想いをつなぎ、新しきを育むまち」というテーマを掲げ、単に新しいものを導入するのではなく、そのまちが持つ個性や精神性、文化や歴史を尊重し、それらを生かしながら融合を図ることを重視しています。同じYNKエリアに根差してきた企業として、地元の方々、テナント様や入居者様、そしてこの地域に愛着を持つ多くの方々と思いを共有しながら、この場所の価値を高め、そこにある課題を一緒に乗り越えていきたいと思います。
TOFROM YAESUは、地下街を介して東京駅に直結しており、高速バスターミナルが開業し、劇場・カンファレンス施設もプレオープンしました。今後は、医療施設や商業区画なども順次開業する計画で、東京駅周辺の回遊性を高め、 YNKエリアの交流機能を強化し、人流の観点でも重要な役割を担っていきます。このように交通、文化、商業を統合する機能を有し、そこで生活する人がより豊かになるための役割を果たしていく重要な存在になると捉えています。
そのためにまず着手すべきなのは、防災性の向上です。 YNKエリアは、かつては古い建物が密集し、緊急車両も通れない道があるなど、危機管理の面で課題を抱えていた地域でした。東日本大震災を経て、災害時にその地域が本当に持続可能かという視点が強く意識されるようになり、街区を一体的に整備する今回の再開発でも、防災性能の向上が重要な柱になりました。TOFROM YAESUでも、広場などによる帰宅困難者の受け入れ機能なども整備され、人を中心に考えることで、命を守る防災性が大前提であるという姿勢が貫かれています。
また、店舗の入れ替わりはまちの活力を維持するうえで欠かせません。しかしそれは、伝統や歴史を切り捨てることではありません。YNKエリアでは、歴史や文化、地域性、精神性を尊重しながら、まちに新しい機能を加えて、より楽しみが生まれる場所に変えていくことを重視しています。商業施設でも、江戸時代から続くYNKエリアの食文化を継承しつつ、新たな個性を加えられるような店舗を集積させる計画が進んでいます。
さらに、このプロジェクトでは「つながり」や「ネットワーク」も重要なキーワードになっています。TOFROM YAESUでは、熱源設備をビル内に整備し、エリアにおける熱源設備と連携させることで、エリア全体でのエネルギー効率をより高める考え方を打ち出しています。交通機能、文化、エネルギー、それぞれのテーマを単独の取り組みとしてではなく、連携させることで、より一層価値を引き出せるようにプランニングする。そして、そこで生きる人のウェルビーイングを支え、高めていく。この循環は、当社グループが掲げるサステナビリティのあり様そのものといえます。
次世代デベロッパーになるために、今だけではなく将来の社会課題も考える
当社グループは、2030年を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」のもと、事業を通じた社会課題の解決と企業としての成長のより高い次元での両立を目指しています。「次世代」と明言し、将来にわたる持続性を前提としたビジョンであるからこそ、当然にサステナビリティに関する取り組みが不可欠な要素となります。これまで述べたように当社グループでは、事業を通じて様々な取り組みを積み重ねてきましたが、「東京建物グループ サステナビリティ方針」の制定を経て改めて目指すべき方向性が明確になった今、従来の延長として漫然と取り組みを推進するのではなく、方針に基づく具体策を計画に落とし込んで着実に実行していくことが重要です。
現在、まさにその実行フェーズへと移行しており、2027年2月には新たな経営計画を公表する予定です。新たな経営計画では、これまでのサステナビリティに関する取り組みを踏まえつつ、当社グループ全体として、より効果的な取り組みを着実に推進できるよう、議論を深めていきます。
YNKエリアで展開されている実践は、決してそのエリアに限定されるものではありません。池袋や関西、さらには地方都市など、当社グループが事業を推進する多様なエリアにおいて、それぞれの地域特性を踏まえながら、その中心にいる人に伴走する形で価値を高めていきたいと考えています。
欧米ではサステナビリティの取り組みに逆行する動きが一部で見られ、日本の企業もその動向を踏まえた対応の在り方が問われていますが、私たちの姿勢が揺らぐことはありません。当社グループの取り組みは、人の思いや価値観に寄り添う実践の積み重ねにほかなりません。持続可能で、安心して住みやすい未来をつないでいくという確固たる思いを貫き、デベロッパーとしてサステナビリティに関する取り組みを着実に推進していきます。
今後においても、この軸をぶらすことなく、人を中心として、今も将来も、人がよりよく生きられるような取り組みを一層推進することで、社会価値と企業価値の双方の向上を実現してまいります。