2022年06月01日

サステナビリティレポート 特集

省エネ・創エネを通じてまちの脱炭素化に寄与する サステナブルなまちづくり

都市開発・ビル物流施設住宅サステナビリティ

世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑える努力をすることに世界が合意した2015年の「パリ協定」から6年が経過しましたが、世界の平均気温は上昇し続けており、大気中のCO2濃度も依然として高く、いまだ地球温暖化に歯止めがかかっていません。

2021年8月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)による第6次報告書では、温暖化が人間の影響によるものであること、そして温室効果ガス(GHG)の排出を今後数十年の間に大幅に削減できなければ、21世紀中に世界平均気温の上昇が2°Cを超えることが示されました。今、取り組まなければ、取り返しのつかない事態がもたらされることが明確となり、世界は脱炭素に向けた動きを加速しています。

当社グループは、長期ビジョンに「次世代デベロッパーへ」を掲げ、「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指しています。なかでも、気候変動は最も重要な社会課題の一つであり、脱炭素社会の実現に貢献することは社会的使命であるとの認識のもと、マテリアリティの一つに「脱炭素社会の推進」を特定し、課題解決に向けて取り組んでいます。2021年5月、その決意表明ともいえるGHG排出量削減中長期目標と、目標の達成に向けた具体的なアクションプランを策定しました。

目標

CO2排出量※1

2030年までの40%削減※2(2019年度比)

2050年度までにネットゼロ

  • CO2排出量:Scope1、2、3の総量。
  • 国際的な気候変動イニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブより「SBT」の認定を取得。

中長期目標達成に向けたアクション

1.再生可能エネルギーの導入

目標

  • 2030年度までに、ビル事業の保有不動産で消費する電力の再生可能エネルギー化40%
  • 2050年度までに、事業活動で消費する電力の再生可能エネルギー化100%

CO2排出量ネットゼロを実現するためには、事業活動において使用するエネルギーを削減するだけではなく、消費する電力については、生産時にCO2を排出しない「再生可能エネルギー」へ転換していくことが必要です。

それぞれの建物において必要なエネルギーを自ら創出した再生可能エネルギーで賄う「自家発電・自家消費」ができることは理想ですが、都心部では、敷地面積や建物形状などの条件から、大規模な発電設備を設置することは難しいのが現状です。そこで、再生可能エネルギーによる自家発電・自家消費、再生可能エネルギー由来の余剰電力をほかの建物へ送電する自己託送、非化石証書等の活用など、各施設に合わせてCO2排出量の削減に努めています。

物流施設「T-LOGI」シリーズでは、各施設の屋上に大容量の太陽光パネルを設置して発電し、各施設での自家消費をするとともに、創出された余剰電力については自己託送の仕組みを用いて、当社グループが所有・管理・運営している商業施設スマーク伊勢崎に送電しています。2022年1月までに竣工したT-LOGI久喜・横浜青葉・習志野の3物件での合計発電量は年間約2,347千kWh(約1,030tのCO2排出量削減効果に相当)になると試算しています。

また、当社が本社を構える東京建物八重洲ビルでは、2020年7月より、トラッキング付非化石証書を利用し、ビル全体で使用するすべての電力(2021年度で年間約3,030千kWh、約1,656tのCO2排出量削減効果に相当)を再生可能エネルギーへと切り替えています。ビル事業では、保有する不動産で消費する電力の再生可能エネルギー化を積極的に進め、早期に100%達成を目指します。

再生可能エネルギー導入の方向性

2.ZEB・ZEHの開発推進

目標

  • 2030年度までに、原則としてすべての新築オフィスビル・物流施設・分譲マンションにおいて、ZEB・ZEHを開発

ZEBおよびZEHは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物です。一言にZEB・ZEHといっても、省エネや創エネの度合いによって、「Oriented」「Ready」「Nearly」「(100%)ZEB・ZEH」4つの種類に分類されます。

国内では2030年度以降に新築される建築物にZEB・ZEH基準での省エネ性能を確保することを目指して、段階的な省エネ基準の引き上げが検討されていますが、当社はそれに先駆ける形で目標設定を行っています。

当社グループでは2030年時点において、Orientedの水準を達成するのはもちろんのこと、省エネ・創エネの水準を高めていくことで、よりレベルの高いZEB・ZEHを目指します。2020年5月に、東京都豊島区の中心・池袋駅東口から約300mの場所に竣工した、池袋の新たなランドマークとなる地上33階建のHareza Tower(ハレザタワー)(オフィス棟)ではLED照明や明るさセンサー・人感センサー制御、高効率型空冷ヒートポンプパッケージの採用など汎用性の高い設備システムの導入に加え、事務所専用部における照明については、照度500lx器具を選定するなど適正な設計条件の導入等を行うことで、高い環境性能を実現し、同規模の標準的な建物と比べて、年間一次エネルギー消費量の50%削減の水準である、ZEB Readyを取得しました。これは超高層複合用途ビルにおける事務所用途の部分評価における認証第1号です。また、現在開発中のBrillia Tower 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING RESIDENCEは、経済産業省による「平成31年度超高層ZEH-M実証事業」に超高層建物では首都圏で初めて採択されました。前年度に同事業に採択されたBrillia 弦巻と同様に、外壁等の断熱性能の向上や高断熱サッシの採用、高効率給湯設備の採用などにより、ZEH-M Orientedを取得しています。

さらに、物流施設T-LOGIシリーズについては、原則としてすべての施設において省エネルギー化の推進と再生可能エネルギーの活用により、年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたはマイナスとなる建築物に与えられる『ZEB』の取得を目指して開発を推進しています。

3.グリーンビルディング認証の取得

目標

  • 2030年度までに、原則として開発するすべての新築オフィスビル・物流施設において、グリーンビルディング認証を取得

グリーンビルディング認証には、不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価する「DBJ Green Building認証」、建築物の環境性能を評価し格付けする「CASBEE」、非住宅建築物の省エネルギー性能を評価する「BELS」などがあります。

当社グループは、CO2排出量削減の中長期目標の達成のためには、事業を通じて環境・社会に配慮した建築物を開発・運営することが重要であると考えており、その姿勢を示す客観的な指標として、この目標を設定しています。

稼働中のオフィスビルでは、テナント様にオフィスをご利用いただきながら省エネ改修していくことは容易ではありません。過去のノウハウを最大限に活用し、稼働中の物件についても、CO2排出量の削減につなげるよう努力しています。

3棟の建物で構成される四条烏丸FTスクエアにおいては、建替えにより新築されるオフィスビル(京都市下京区/2022年8月竣工予定)でBELSの5つ星およびZEB Readyを取得するとともに、稼働中のオフィスビルの一部において電気・ガスの併用方式から電気のみの方式への切り替えや省エネルギー性能を有する設備の導入による空調熱源改修工事などによりBELSの4つ星を取得しました。

また、賃貸マンションBrillia ist Tower勝どきでもDBJ Green Building認証を取得するなど、住宅においてもグリーンビルディング認証の取得を推進しています。

グリーンビルディング認証取得物件(一例)

Hareza Tower
・DBJ Green Building認証:5つ星
・ZEB Ready(BELS:5つ星)
・CASBEE-建築(新築):Sランク

Hareza Tower

四条烏丸FTスクエア
一部建替プロジェクト

・ZEB Ready(BELS:5つ星)
・CASBEE-建築(新築):Sランク
・CASBEE-ウェルネスオフィス:Sランク(パターン1:共用部、パターン2:共用部+専有部の一部)

四条烏丸FTスクエア一部建替プロジェクト

CO2排出量削減に寄与する取り組み

1.木材の利用促進

目標

  • 2030年度までに、原則として開発するすべての新築オフィスビル・物流施設において、グリーンビルディング認証を取得

木はその成長段階で大気中のCO2を吸着・固定しており、木材となった後もCO2が内部に固定されると考えられるため、脱炭素に寄与するといわれています。当社ではすでに内装材や家具に木材を多く使用していますが、今後もより積極的に利用していきます。(仮称)洗足池プロジェクトなど、主要構造部に木造CLT(Cross Laminated Timber)パネル工法を採用したプロジェクトも動き出しています。

2.お客様との連携・共創

目標

  • テナント様とのサステナビリティに関するコミュニケーションを年4回以上実施
  • 入居者様とのコミュニケーションを行い、サステナビリティに関する施策を立案および推進

建物の利用において消費されるエネルギー量や排出される廃棄物量の削減には、建物を利用するテナント様や入居者様の協力が不可欠です。省エネルギーやリサイクルなどの取り組みの促進と、建物の利用にかかる快適性との両立といった観点からも、当社グループのみで課題を解決することは難しいと考えています。

ともに取り組むうえでの第一歩として、省エネルギーやリサイクルなどの案内や協力のお願いなどのコミュニケーションを通じて、テナント様や入居者様の理解が得られるよう努めています。

環境負荷の低減や脱炭素を意識した
サステナブルなまちづくりを目指して

現在当社は、多数の企業が集積する、世界を代表するビジネス地区である八重洲・日本橋・京橋エリアで「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業」(八重洲プロジェクト)や「八重洲一丁目北地区市街地再開発事業」(呉服橋プロジェクト)といった大規模再開発を推進しています。これらの事業では、本エリアの持続的な発展のために、環境負荷の低減や脱炭素を意識した社会課題解決型まちづくりを推進しています。

大規模高効率コージェネレーションシステム(CGS)、CGS廃熱の直接利用、CGS廃熱利用冷凍機および蓄熱槽を組み合わせた高効率な地域冷暖房(DHC)プラントを整備し、電力と熱を供給することでエネルギーの効率的な利用を計画しています。さらに、既存の八重洲日本橋DHCとの連携(既存プラントへのエネルギー供給)により、地域全体でのエネルギーの効率的な利用を促進し、エネルギーの面的利用による環境負荷低減を目指しています。

また、京橋エリアに位置する東京スクエアガーデンにおいては慶應義塾大学SFC研究所とともに、ビルの開発エリアにおける開発前後のCO2排出量を比較し、ビルにおける様々な省エネ、創エネ等の環境に関する取り組みの効果を比較・評価することにより、カーボンニュートラルへの貢献を可視化する共同研究「M-NexT(エム・ネクスト)」を進めています。今後はこのような可視化の手法等を用いて、脱炭素化・持続可能なまちづくりを推進していきます。

エネルギーの面的利用イメージ図
左:東京駅前八重洲一丁目 東地区市街地再開発事業(八重洲プロジェクト)
右:八重洲一丁目 北地区市街地再開発事業(呉服橋プロジェクト)

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