体制面の変化にとどまらず、その活用を通じて意思決定や人材・報酬・事業ポートフォリオの議論を深め、当社グループが持続的成長と企業価値向上をどのように実現していくのかについて、社外取締役3名が意見を交わしました。
コーポレート・ガバナンス体制の
高度化と取締役会の進化による
企業価値向上
- (左から)
- 社外取締役 西澤 順一
- 社外取締役 恩地 祥光
- 社外取締役 田内 直子
取締役会の変化と意思決定の高度化
西澤
当社の社外取締役となり1年が経ちましたが、現中計を発表した直後ということもあり、個別案件についての議論が多い印象でした。ただ、個別案件を通じて、意思決定のプロセスや、当社の事業・現場の取り組みに対する理解が進み、取締役会の議論の前提を把握することができました。
田内
当社に参画してまず印象に残ったのは、100億円、場合によっては1,000億円単位の大きな案件を取り扱っている点です。社外取締役としては、詳細に踏み込みすぎるより、リスクの観点など視座を高くして参画することが求められていると認識しています。また、不明点を解消したうえで取締役会議論に臨めるよう、事前説明が行き届いている点も評価しています。一方で、議長からは意見を求められることも多く、良い意味での緊張感も備わっています。
西澤
取締役会における質疑においても自由に質問でき、その場で解消できなかった点については後日説明があるなど、情報が覆い隠されているという印象はなく、取締役会がファンダメンタルな議論をする場として機能していると考えています。
社外取締役ミーティングを通じた事業理解と次世代経営層との対話
恩地
1年前に西澤さん・田内さんを迎え、社外取締役・女性役員の比率が向上し、新たな視点が加わったことで、より多角的な視点で議論ができるようになりました。また、同時期に発足した「社外取締役ミーティング」において各事業本部の勉強会等を実施したことで、社外取締役の事業理解が進み、各人が専門性を踏まえて議論に参画しやすい環境が整ってきたと認識しています。
西澤
昨年度の社外取締役ミーティングでは、事業理解の促進とともに次期経営層とのコミュニケーションも図ることができました。私は自分の仕事を説明することが個々の資質や、説明能力、人間力を知ることに有効だと考えており、勉強会等において部長・中堅人材から説明を受けることで、それらを感じることができましたので、一石二鳥、三鳥の効果があると思います。
田内
業界のバックグラウンドがない相手に対して、どのように説明するのか、またどんな質問が飛んでくるのかを考えることは今後経営を担うポジションになった時に必要となってきますので、社外取締役に対して事業を説明することは双方にメリットがあると感じています。
恩地
執行側の人材と社外取締役の対話が深化したことは大きな前進ですが、サクセッションプランの整備はまだまだ道半ばです。ミーティングという場にとらわれることなく、次世代経営人材との接点を増やすとともに、指名諮問委員会の場を活用し、整備を進めていきたいと思います。
強靭かつしなやかな事業ポートフォリオの構築を目指して
恩地
事業ポートフォリオ戦略については、より深い議論が必要です。現状は、物件を保有するのか売却するのかといった「資産ポートフォリオ」に関する議論にとどまっていますが、ビルや住宅、ホテル・物流施設といった各セクターにおいて今後目指していく姿を定め、戦略を策定していくべきだと考えます。
田内
同感です。今後の成長を考える時には、例えば住宅事業の戸建やビル事業におけるバリューアップ案件など、既存事業の周辺分野にも機会があると考えています。加えて、既存事業とのシナジーが期待できる領域も選択肢になると思いますが、そのような候補を自社の成長戦略に基づいて検討し、自社で取り組むのかM&Aなどの手法を活用するのかも考えていくことが必要ではないでしょうか。
西澤
地政学リスクの高まりや金利水準の上昇など外部環境の不透明感は増大しており、複合的なリスクも含めて組織としてのリスク認識・対応力を高度化させることも常に意識していくべきだと思います。当社の中核事業は現在好調ですが、ダウンターンになった時に影響を受けない領域、別の観点で言えばバランスシートを使わないような領域を強化していくことも検討すべきです。
田内
今後も事業ポートフォリオ全体の中でどのような役割を果たすのかを整理し、自社の成長戦略との整合性を踏まえながら、投資の優先順位を見極めてほしいと考えています。
資本市場を意識した報酬体系への転換
恩地
2025年から2026年にかけて社内取締役の報酬体系を見直し、業績連動報酬や株式報酬の比率が引き上げられました。これは資本市場と向き合いながら業績へのコミットメントと中長期的な成長を両立していくうえで重要な一歩だと認識しています。
田内
業績連動報酬について、業績を反映しやすいROEといった財務指標は、評価への反映を意識すべきだと考えています。一方で、ESGのような数値化が難しい観点をどこまで評価に組み込むかについては課題もありますが、これらを報酬体系に取り入れることで、経営として常に中長期的な成長を意識する仕組みが整ってきたと認識しています。
西澤
業績連動報酬や株式報酬の比率を引き上げることはグローバルに見ても自然な流れです。指標ごとの目標設定や評価方法は今後の重要な課題ですので、社外取締役としても慎重に見極めながら、実効性のある制度として定着させていく必要があると考えています。
ガバナンスの更なる強化、取締役会の活性化に向けた提言
恩地
冒頭に触れた取締役会への付議基準については、当社の資産規模の拡大を踏まえ見直しが必要かもしれません。ただし、M&Aや新規事業といった戦略的な事案については、金額の大小にかかわらず、引き続き上程してほしいと考えています。
田内
当社の取締役会は、いわゆるモニタリングボードを目指した高度な運営がなされており、その実現に向けて機能の充実を図っています。役付執行役員などで構成されるグループ経営会議を経て取締役会に上程される議案以外についても、同会議でどのような議論があったのかを把握できると、さらに幅広い議論が可能になるのではないでしょうか。
西澤
どんなに多様性に富んだ、風通しの良い組織でも、時間の経過によって、議論の同質化が進行しますし、社外取締役も例外ではありません。スキル・マトリックスだけに注目するのではなく、メンバーが変わらないことによるロスも意識すべきだと考えます。
恩地
社外取締役の役割も、当社の成長とともに変化していきます。変化に適切に対応しながら、社外の視点を活かし、取締役会の実効性を高めることで、企業価値の向上に貢献していきたいと考えています。
恩地
私が社外取締役に就任した2018年頃を振り返ると、当時の取締役会では議題の大半が投資案件で、事業活動の是非を決める場としての色合いが強かったと感じます。現在は、事務局やメンバーの交代を経て、経営計画やM&A、新規事業など、様々なカテゴリーに関する戦略的な討議が増え、議論を尽くしたうえで企業価値向上に向けて機関決定する場へと変化してきました。また、投資案件についても引き続き議題に挙げられていますが、「この投資が中期経営計画にどのような影響を与えるか」といった観点が示されるようになった点も、意思決定の質の向上につながっていると考えています。