2025年度の業績評価と中期経営計画前倒し達成への自信

2025年1月のCFO就任後、数多くの投資家の皆様と対話の機会をいただきました。経営企画部長として自ら策定に携わった中期経営計画(2025-2027年度)(以下、「現中計」)について、直接フィードバックいただき、現中計発表直後に当社の株価が急落したのは、市場が当社に求める成長期待の高さの裏返しであると認識しました。当社の役職員一同、発表直後から現中計の前倒し達成に向けて邁進していますが、あらためて2025年度の業績を振り返りたいと思います。

2025年度の実績としましては、営業収益・営業利益・事業利益・経常利益はいずれも過去最高を更新し、特に営業利益は前期比で20%超の成長を達成しました。不動産市場全体が好調であったことは事実ですが、当社の良質な資産ポートフォリオに基づいた賃貸収益の伸長に加え、投資家向け物件売却事業の利益率向上に伴う粗利益額の増加が主たる要因であると捉えています。賃貸収益の伸長においてはインフレを背景としてオフィスを中心に賃料の増額が進み、今後の継続的な賃貸収益の向上に確かな手応えを感じています。また、投資家向け物件売却事業については、多様なアセットタイプをストックし、その時々にニーズの強いアセットを売却することで利益の最大化を図っていることはもちろん、競争を避けた用地取得戦略が奏功した結果であると認識しています。

また、2026年度の業績ガイダンスにおいては、「TOFROM YAESU」竣工などに伴う費用が発生するものの、投資家向け物件売却事業の売上・粗利益の増加などにより、営業収益・営業利益・事業利益・経常利益は2025年度の実績をさらに上回る過去最高を達成する見通しです。さらに、現中計で掲げた主要な定量目標の一部は1年前倒しで達成することを見越しています。

現中計における主な定量目標と2026年度予想

2026年度予想

現中計目標(2027年度)

事業利益

1,020億円

950億円

配当性向

40.2%

40%

親会社株主に帰属する当期純利益

630億円

600億円

EPS

303.46円

290円程度

足元では金利上昇や地政学リスクの高まりなど、不透明な状況が続いていることは認識しています。特に金利上昇は、支払利息の増加だけでなく、住宅ローン金利上昇に伴う分譲マンションの購買意欲低下や、スプレッド縮小によるCapレート上昇など、当社事業に一定の影響が懸念されます。一方で、短期的な影響は現状限定的であり、今期の業績達成には強い自信を持っています。

金利上昇による2026年度業績への影響と現状認識

支払利息の増加

●借入金の長期固定化を図り、影響を抑制

●上昇分については業績ガイダンスに織り込み済み

住宅ローン金利上昇に伴う分譲マンションの
購買意欲低下

●足元の販売状況には変調なし

●2026年度契約進捗率8割(2026年3月末時点)

Capレート上昇に伴う
不動産価格の低下

●取引状況・価格に変調なし

●アセットによっては金利上昇を成長期待が上回っている状況

ただし、いずれの課題も中長期的には当社に影響を与えるものと認識していますので、ポートフォリオ戦略・バランスシートコントロール・キャッシュアロケーションそれぞれで対策を講じていきます。

資本コストを上回るROEの実現に向けたポートフォリオ戦略

私は、金利上昇局面においては、資本コストを上回るリターン創出力が問われると考えています。リスクフリーレートの上昇に伴いWACCは確実に上昇しているため、当社では、収益性と効率性をこれまで以上に高め、ROEをはじめとした資本効率をもう一段高い水準に引き上げることを目指します。

収益性の観点については、賃貸分野における賃料改定により、安定収益の底上げを図るとともに、開発フェーズでは建築費上昇を前提としつつ商品性の向上により付加価値を高め、収益水準の引き上げを目指します。さらに、再開発やまちづくりを通じてエリア価値そのものを高めることで、持続的に高い収益性を生み出す基盤を構築していきます。

効率性の観点では、投資家向け物件売却事業を成長ドライバーとし、回転率の向上に加え、バランスのとれた資産ポートフォリオ運営を推進しています。足元では物流施設の比率が増してきていますので、ホテルなどの投資を拡大し、アセットタイプの多様化を通じて市場環境の変化への耐性を高めるとともに、時代に応じた最適な投資・売却の判断を行うことで、売却益の最大化と収益機会の拡大を図っていきます。

また、長期的に成長が期待できるアセットタイプや、八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアをはじめとして当社が関与することで、市場成長以上の価値向上が期待できる資産は保有し、ポートフォリオ全体の質を継続的に向上させることを目指します。一方で、それ以外の資産については最適なタイミングでの売却に努め、固定資産などの含み益を顕在化することで、資産効率の向上を加速させていきます。

これらの取り組みにより、当社は安定収益の拡大と資産効率の向上を同時に実現し、資本コスト上昇局面においても持続的にリターンを創出できるポートフォリオを構築していきます。さらに、市場環境の変化を前提とした柔軟な資産入れ替えを通じて、成長の質と再現性を高めながら、持続的な企業価値向上を追求していきます。

財務規律の維持と資本コストの最適化に向けた資金調達戦略

当社は、前述したポートフォリオ戦略を通じて収益性および効率性の向上を図るとともに、それを支える資金の調達については、財務規律の維持と資本コストの最適化を図っていきます。まず、財務指針として掲げている、D/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債/EBITDA倍率12倍程度については、資本効率と財務健全性のバランスを踏まえた指標として、引き続きこの範囲内でコントロールしていきます。安定的な利益成長による自己資本の拡充をベースとし借入を中心に資金調達を行っていくことで、過度なレバレッジへの依存を回避しつつ、安定的な財務基盤の確保を図っていきます。

負債に関しては、これまで長期かつ固定を基本として金利上昇リスクへの耐性強化を図っていますが、大規模再開発など長期にわたるプロジェクトも複数抱えていることから、今後も大きな方針に変更はありません。一方で、足元の金利環境の変化を踏まえ、借入については固定・変動のバランスや調達期間について柔軟性を高めるとともに、社債の追加発行などもあわせて検討することで、最適な構成を追求していきます。また、当社の賃貸資産は都心のプライム立地に多く保有しており、安定的なキャッシュ・フローを創出しています。さらに、まちづくりや再開発を基盤として、収益の安定性と資産の信用力を高めています。これにより、資金調達における信用力の裏付けが確保されており、資金調達コストの抑制と安定的な調達環境の維持につながっていると認識しています。

こうした取り組みの結果、2026年5月には日本格付研究所(JCR)による長期発行体格付がAからA+に引き上げられました。この格付は、当社の安定的な収益基盤および規律ある財務運営が評価されたものと認識しており、今後の資金調達においてもコスト抑制および調達手段の多様化に寄与する重要な基盤になると考えています。今後もバランスシート全体に目を向け、安定的な収益基盤をもとに、デットとエクイティを戦略的に組み合わせることで、資本コストを適切にコントロールし、成長投資を着実に実行できる財務基盤を構築していきます。

資本効率向上に向けたキャッシュアロケーション

私は、持続的な企業価値向上の成否は、創出したキャッシュをいかに規律高く、資本効率の高い領域へ最適配分できるかで決まると考えています。金利上昇や建築費高騰といった環境変化を見据え、「回収」「投資」「株主還元」の3つのサイクルにおいて、バランスのとれた厳格なコントロールを徹底していくことが重要だと認識しています。

3年間のキャッシュアロケーション

1. 回収:資産回転の加速と含み益の顕在化

回収の観点では、投資家向け物件売却事業を中核に据え、資産回転を通じたキャッシュ創出を進めています。2026年度はホテルを中心に過去最大規模の売却を見込んでおり、本事業は当社の利益計画におけるキーファクターとなります。買い手の増加による日本の不動産市場への資金流入、将来の成長期待からCapレートにも大きな変調は見られません。加えて、当社開発アセットの高い商品性も評価されており、売却環境は引き続き良好であると認識しています。2025年度から継続して利益率が高い水準にあることから、回収額そのものが伸長していないという点では課題も残っていますので、今後は利益水準と回収規模のバランスを意識しながら、より安定的なキャッシュ創出力の向上を図っていきます。

また、固定資産および政策保有株式についても計画的に回収を進めていきます。2027年までに合わせて1,300億円規模の売却を予定しており、固定資産については含み益の顕在化を通じて資本効率の向上を図ります。政策保有株式については、株価上昇に伴う純資産比率の変動という外部要因はあるものの、「2027年度末に純資産比率10%以下」の目標達成に向けて外的な環境変化にかかわらず売却を推進し、創出したキャッシュは成長投資を中心に循環させていきます。

2. 投資:信頼と選別に基づく成長投資

投資の観点では、2025年度の投資実績は順調に推移し、2026年度の投資計画についても着実に進捗しています。近年は案件化までに時間を要する物件が増加しており、キャッシュアウトがやや後ろ倒しとなる傾向が見られますが、良質な案件を確保できていることから中長期的な利益創出に懸念はありません。一方で、昨今の金利上昇を踏まえ、今後は投資判断におけるハードルレートの見直しも検討し、資本コストに見合うリターン確保を徹底していきます。

用地取得環境は競争が一層激化していますが、当社は入札による価格競争に依存せず、厳選投資の姿勢を堅持しています。不動産は極めて高額であり、売り手にとっても重要な資産であることから、取引においては価格のみならず「確実に決済が履行されるか」「信頼できる相手か」が強く重視されます。また、売却先が将来の事業関係に影響を与える場合もあり、信頼は意思決定の重要な基準となります。当社は「信頼を未来へ」という企業理念のもとで企業文化を醸成し、一つひとつの案件に誠実に向き合い、長年にわたり信頼を積み重ねてきた強固な人的基盤を有しています。加えて、用地取得における専門人材の育成にも注力しており、こうした人的資本が競争環境下においても再現性をもって優良案件を確保する基盤となっています。

海外事業については次期経営計画における成長ドライバーとして位置付けており、戦略の転換を進めています。2025年度の中国事業における貸倒引当金計上に伴う損失を真摯に反省し、現在は法制・税制の透明性が高くカントリーリスクの低い、米国や豪州などの先進国市場へ明確に軸足をシフトしています。足元では非常に良質な案件の取得が進んでおり、今後は先進国を中心に規律ある投資を加速させていきます。

3. 株主還元:利益成長と連動した還元の強化

当社は、持続的かつ安定的な利益成長を通じて、配当を中心とした株主還元の充実を図ってきました。この株主還元方針に変更はなく、2026年度の利益が現中計の目標を前倒しで達成する見込みであることを勘案し、配当性向についても目標である40%を前倒しで達成する見通しとしました。また、自己株式についても、株価水準や事業環境、財務の状況などを勘案しながら機動的に実施していきます。今後も、株主還元については一層強化していく必要があると考えており、企業価値向上に資する成長投資とのバランスを考慮しながら増配を続けていきたいと考えています。

戦略的資金枠の活用

当社は、上記のキャッシュアロケーションにおいて、将来の成長機会を柔軟かつ積極的に取り込むため、戦略的資金枠を設定しています。既存事業の拡大に加え、新たな領域への展開を通じて収益機会を多様化し、中長期的な企業価値の向上を図ることを目的としています。

今後の利益成長と資本効率の更なる向上においては、サービス分野の成長がカギになると考えています。中でもファンド事業は、運用資産残高の拡大に応じた安定的なフィー収益が期待でき、収益の安定性と資本効率向上の双方への寄与が見込まれる分野です。サービス分野に限らず、今後の利益成長スピードを加味した時には、オーガニックな拡大だけでなく、アライアンスやM&Aなどの手段を用いたインオーガニックな成長も不可欠になると認識していますので、戦略的資金枠の積極的な活用も視野に入れていきます。

なお、2026年5月には戦略的資金枠を活用し、スター・マイカ・ホールディングス株式会社との資本業務提携を実施しました。当社の新築分譲における強固なブランド力・企画力と、同社が持つ中古マンション流通に関する卓越したノウハウを融合させることで、今後更なる拡大が見込まれる住宅ストック・リノベーション領域でのシナジー創出を強力に推進します。戦略的資金枠は、こうした新たな成長機会を確実に捉えるための柔軟性を担保するものであり、財務規律の維持を前提としつつ、資本コストを意識した投資判断のもとで活用していきます。今後も、既存事業の深化と新規領域の拡張を両立させることで、収益機会の多様化と資本効率の向上を図り、持続的な企業価値の向上を実現していきます。

ステークホルダーの皆様へ

2025年度は、株主・投資家の皆様をはじめとして、様々なステークホルダーと対話を重ねた一年でした。CFO就任後、多くの方々と直接意見交換を行う中で、当社に対する期待の大きさとともに、資本効率や成長性に対する課題認識についても、あらためて深く理解することができたと感じています。また、足元では金利上昇を背景として資本コストが強く意識される環境に変化しており、資本市場との対話の重要性は、これまで以上に高まっていると認識しています。私は、対話を通じて得られた外部からの視点を真摯に受け止め、当社の経営に具体的に反映していき、意思決定の質を高めていくことが、中長期的な企業価値の向上につながると考えています。

私自身、経営企画に携わってから数えて、今回で4回目の経営計画の策定に臨むことになります。初めて策定に関与した2014年当時と比較すると、当社の営業利益は現在では3倍強の水準にまで成長しており、着実に企業としての成長を積み重ねてきたと実感しています。一方で、資本市場から求められる水準は年々高まっており、その期待に応えるためには、これまで以上に成長の質とスピードを意識した経営が求められていると認識しています。次期経営計画については現在議論を重ねていますが、どのような目標であっても、当社らしく一つひとつの取り組みを着実に積み重ね、その達成に向けて確実に歩みを進めていく姿勢を示していきたいと考えています。今後も、ステークホルダーの皆様との対話を通じて得られる示唆を経営に活かし続けることで、より強固で持続可能な企業価値の向上を実現していきます。引き続き、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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