
貢献するSDGs目標
東京建物は長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」を掲げ、「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指しています。様々な分野で社会課題解決に取り組む中で出会ったのが、「Regeneration(リジェネレーション)」の概念です。リジェネレーションは、地球や社会、人々のウェルビーイングを同時に追求し、生態系や社会を持続的に回復・再生させながら多元的な価値を創出していくという考え方です。2050年までに世界の人口の約70%が都市に集中すると予測されている中、大都市を中心にリジェネラティブな活動に取り組むことで、より豊かな未来を実現できると考えます。
このようなリジェネレーションの考えのもと、東京建物は2024年に「Regenerative City Tokyo」構想を発表しました。2027年末までに、八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアを中心に、地球・社会・人々のウェルビーイングを向上させる共創イノベーションを10以上創出。それらをグローバルに発信していくことで、リジェネラティブな世界を実現するための最先端都市として、東京がロンドン・パリ・ニューヨークといった国際都市の新たなロールモデルになることを目指します。


「Regenerative City Tokyo」構想の発表に先立ってオープンしたYNKエリアの新たな共創拠点が、東京建物八重洲ビル内に誕生した「Tokyo Living Lab」です。「Tokyo Living Lab」は、美食科学の国際拠点「Gastronomy Innovation Campus Tokyo (GIC Tokyo) 」と「8go Innovative Kitchen(エゴ イノベーティブ キッチン)」の2施設から構成されます。リジェネレーションはあらゆる分野に関係するものであるため、様々な分野での取り組みを進めていきますが、「Tokyo Living Lab」ではその中でも重要分野のひとつとして、人々の身近な生活から地域社会・文化・地球環境まで、多様な要素がひとつながりになる「食」に着目しています。YNKエリアは、かつて日本橋の魚河岸や京橋の大根河岸などが置かれ、歴史的に食文化の発展を担ってきました。そんなYNKエリアだからこそ、多面的な視点から食の社会課題解決に向き合う意義があると考えます。東京駅前から、食のイノベーションを創出するユニークな取り組みについて、ご紹介します。

ガストロノミーを通じた学びと共創のためのグローバルイノベーション拠点

「GIC Tokyo」は、「Regenerative City Tokyo」構想において、共創・オープンイノベーションの領域における具体的アクションを担っています。パートナーは世界屈指の美食科学のアカデミアであり4年制大学・大学院(修士・博士課程)を擁するスペインのバスク・カリナリー・センター。その次世代教育・事業共創プラットフォームである「Gastronomy Open Ecosystem(GOe)」と共同で開設しました。GOeにとって初となる国際拠点です。
Gastronomy(ガストロノミー)とは、単なる美食にとどまらず、文化・芸術・科学などを包含した食の取り組みや体験を意味します。バスク・カリナリー・センターは調理技術に加えて、「×サステナビリティ」「×歴史」「×マーケティング」というように、ガストロノミーに諸科学を掛け合わせた学びを提供。こうしたカリキュラムを通じて、3Dフードプリンターや遠心分離機・凍結乾燥機といった料理に応用できる科学研究機器を備えたキャンパスで最新のフードテックを実践できます。また発酵や熟成・旨味といった日本の食文化に合わせてコンテンツ化することで、日本ならではのオリジナルのプログラムを開発・提供しています。
先日開催された「ガストロノミー×考古学」をテーマにした講座では、発掘された土器からアワやヒエの成分が解析されたことを受けて、専門家の講義とともに現代風にアレンジした穀物のメニューが提供されました。タイムトラベルのような食体験を通じて、地域の特性や古来の食文化への理解も深まるプログラムとなりました。
GIC Tokyoの受講対象は、学びなおしの場を求めるシェフ、共創のパートナーを求める企業やスタートアップ、実学で社会に貢献したい研究者など、食のエコシステムを形成するすべての方々です。グローバル目線で異分野の共創によるイノベーションを巻き起こし、日本の食をアップデートするプレーヤーが未来を語りあう場を目指します。ここから生まれる多様なイノベーションは、YNKエリアのさらなる価値向上にもつながると考えています。


科学研究機器で最新のフードテックを実践
GIC Tokyoでは、調理実習やワークショップなどができるスペースに、3Dフードプリンター・エバポレーター※・減圧調理器・凍結乾燥機・遠心分離機といった料理に応用できる科学研究機器を設置。ガストロノミーを多様な人々に体験していただけるインクルーシブな食の実現に向けた様々な実証実験が可能です。例えば、3Dフードプリンターは食材を柔らかくして形状を再現。嚥下障害などに悩む方が家族と一緒に食事を楽しめるようになります。研究者×シェフなど異分野交流による活用から、それぞれの視点がもたらす食の新しい発見が期待できます。
※蒸発による気化熱を利用した冷却装置。食品に応用される科学機器
イノベーションを実装。リジェネラティブな食を身近に

「Tokyo Living Lab」を構成するもうひとつの施設が「8go Innovative Kitchen」です。共創・オープンイノベーションにより創出された新しい価値を、実際にリアルな場に落とし込むことで、人々が日常的に体験することができるよう社会実装する役割を担っています。日本においては主に富裕層向けの高級レストランで定着していたガストロノミーですが、「調和と循環」をテーマにミシュラン店などで腕をふるってきた野田達也シェフのプロデュースにより、カフェランチとタパスでカジュアルに体験することができます。
その一例が、ランチメニューにセットされるサラダ。使用されるレタスやハーブは、同じくYNKエリア内の植物工場兼研究施設「PLANTORY tokyo」で栽培されたもの。気候変動による生産の不安定化や輸送コストの上昇に対して、消費地での安定した供給を可能にしています。この「徒歩5分のサラダ」を通じて、消費することがどんな循環につながるのか、どんな食の問題を内包しているのか、様々な気付きを得ることができます。
また、隣接するGIC Tokyoからのインスピレーションもメニューに活かされています。GIC Tokyoのセミナーやプログラムには「8go Innovative Kitchen」のシェフ・スタッフも出席。一方で、海外からのインターン生をキッチンに招き入れて、ともにリジェネラティブな食体験を創出しています。

ガストロノミーアドバイザーでもある野田達也シェフは、意気込みを語ります。
「海外では、味やコストパフォーマンスとは別に、環境に対する取り組みや本質的な意味でのガストロノミーがお店選びの基準のひとつになっています。日本でも共感する仲間を増やし、料理を提供する側の意識やクオリティをアップデートしたい。そこから、『美味しく楽しく食べられるならリジェネラティブなお店に行きたいね』と、ごく一般の方々の意識まで変えていけたらうれしい。そのためのデザインを多数用意して、この店から価値を発信していきます」
自分の行動をひとつ変えてみよう
多様な背景を持つ人々が集まり、課題に向きあうための学びから共同研究、新しいプロジェクトの共創、それらの社会実装による体験・共感が循環して、さらに多くの取り組みが生まれていく。そんなリジェネレーションのエコシステムを、東京建物がハブとなって構築していきます。自分の行動をひとつ変えてみよう。そう思える新たな価値を東京からグローバルに発信し、様々な分野、多様な視点から、リジェネラティブな世界の実現に貢献していきます。