DO for 再生

サステナビリティを拡張し、新たなロールモデルの実現へ(RegenerAction Japan 2023レポート前編)

貢献するSDGs目標

  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 15.陸の豊かさも守ろう
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15 陸の豊かさも守ろう
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

サステナビリティの考えを発展させた新たな概念「リジェネレーション」。生態系や社会の回復・再生に目を向ける思想や取り組みを、日本ならではの文脈から理解し、世界に発信する国際カンファレンス『RegenerAction Japan 2023』を、2023年12月6日(水)に東京スクエアガーデンの東京コンベンションホールで開催しました。

リジェネレーションとは?

資源・環境を保存し続けるだけではなく、生態系や社会を積極的・持続的に回復・再生することを重視したアプローチ。ヨーロッパを中心に提唱された、環境や社会、人々へのポジティブな影響を同時に実現することを目指す考え方です。
例えば農業分野においては、単なる資源の最適利用だけでなく、土壌の健康を回復させ生態系を再生させながら、人々に安心で栄養豊富な食材を提供し人々の雇用創出も目指す、といった取り組みが挙げられます。
短期的な利益よりも長期的な価値を重視するため、日本に根づく「三方良し」といった考えとも親和性が高い思想です。

東京建物グループは、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」に基づき、「社会課題の解決」と「企業としての成長」のより高い次元での両立を掲げ、世界共通の社会課題の解決に向けた取り組みを推進しています。
『RegenerAction Japan 2023』は、リジェネレーションの思想や取り組みを成熟した大都市・東京に取り入れることで、人々の生活や社会のつながり、地球環境を現在より豊かにする都市として再生し、世界の新たなロールモデルとなる「Regenerative City Tokyo」の実現を目的に開催されました。共催は、イタリアを中心にヨーロッパでリジェネレーションにつながる活動を進めているFuture Food Instituteと、食の価値創出を通して持続可能な社会の実現や人々の暮らしを豊かにすることを目指すTOKYO FOOD INSTITUTE。初開催ながら、多様なフィールドで活躍する15名のゲストが登壇し、欧米での動向も参考にしながら、東京からリジェネレーションを発信しました。

前編ではリジェネレーションの思考と世界の潮流を学ぶセッションの様子を、後編では企業の取り組みやピッチコンテストの模様をお伝えします。

左から、
Future Food Institute 創設者・代表 サラ・ロヴェルシ⽒
東京建物 代表取締役専務執⾏役員 ⼩澤 克⼈
東京都 政策企画局技監 安部 ⽂洋⽒
TOKYO FOOD INSTITUTE 代表理事/東京建物 沢 俊和

リジェネレーションの思考と世界の潮流を学ぶ

東京コンベンションホールの大ホールで行われた午前のセッションでは、イタリア、デンマーク、アメリカ、日本のケーススタディをもとに、リジェネレーションのベースとなる思考と世界の潮流に触れました。ここでは共催した2団体のセッションをご紹介。イタリアで3年前からリジェネレーションを発信し続けているFuture Food Instituteと、食産業の発展や地球あるいは人々の未来につながる公益的な利益を追求するTOKYO FOOD INSTITUTEの代表が未来へ向けたアクションについて語りました。

統合型経済社会への変革の核心となるリジェネレーション

2014年にイタリアで設立されたNPO「Future Food Institute」。イタリア・ポリカを中心に、行政、企業、市民をも巻き込むリジェネラティブなエコシステムの形成に取り組んでいます。本セッションには代表のサラ・ロヴェルシ氏が登壇。ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のワーキンググループに参加中であり、その合間を縫って来日していただきました。
COP28では持続可能な社会の実現に向けて「Actionism(行動主義)」が重要なテーマになっているとのこと。会場でも食糧の安全保障や農業への注目度は非常に高まっていると感じたそうです。
そんなロヴェルシ氏が創設したFuture Food Instituteがなぜリジェネレーションに取り組むのでしょうか。

食からつながる地球規模の課題に統合的なアプローチを

「FOOD is the NEXUS」とロヴェルシ氏はいいます。
「食の問題は水、植物、空気、文化や家族関係にまでつながります。さらに世界の飢餓人口は10億人ともいわれ、疾病と食との関係や深刻なフードロスなど課題が山積しています。こうした地球的課題に対して私たちができることは何なのかと考えたのです。
都市では出生率も劇的に低下していますね。日本は少子高齢化が進み、2100年には人口が5,000万人程度にまで減少すると推測されています。食は繁栄や長寿とも密接につながるもの。病んだ世界で健康に暮らすことはできないのです」
そのためにFuture Food Instituteは「教育・コミュニティ・イノベーション」という3つの活動領域を通じて、「政治」「地球」「人間」「社会」「文化」「経済」を包括する統合的なアプローチを続けています。
「新たなマインドセットが必要です。所有権よりも情報にアクセスする権利へ。中央集権化よりも分散型自律組織へ。人間中心主義よりも生命中心主義へ。直線経済ではなくリジェネレーションへ。信頼関係を築きながら枯渇する資源の再生を考えるときです」

コミュニティ全体で挑む持続可能な産業とまちづくり

Future Food Instituteは食の世界に変革をもたらすチェンジメーカーです。その中軸となっているのが、経済成長のみならず社会的、環境的な豊かさを含む包括的な繁栄を目指す「繁栄思考(プロスペリティ・シンキング)」。その実践の場がイタリアの地中海に面したまち、ポリカでした。
「イタリアは歴史的伝統があるなど日本との共通項が多い国です。ポリカでも長寿とウェルビーイングをかなえるライフスタイルが受け継がれてきました。その一方で高齢化が進み、若い世代は都市へ流出していました。そんな折、行政が英断を下してサステナブルなイノベーションへと歩みはじめました。現在では文化財や環境、多様性を大切にしながら、コミュニティ全体でワインの生産を持続可能な方法で続けています。地域の技術を継承し、繁栄を目指して努力しているのです。Future Food Instituteはリビングラボを設置してポリカの活動を支援しています。こうした歩みを世界にも展開していきたいです」

東京でもアクション開始。豊かな発想を次の行動に

イタリアから世界へ。実際に世界4都市に拠点を構え、日本でも2019年から東京建物と共同で持続可能な社会の構築に向けた活動を始めています。20年には東京に「京橋リビングラボ」を設立。そして23年12月、今回の『RegenerAction Japan 2023』を共催する運びとなりました。
「ありがとうございます。将来のビジョンを考える人たちが集まってくれました」
ロヴェルシ氏は海外からの登壇者を紹介しながらこう呼びかけました。
「私たちはこの場で、変革に向かって学びあうことができます。多くのパートナーとつながるすばらしいチャンスです。たくさんのインパクトとインスピレーションを受けるでしょう。どうか参加者が一丸となってよりよい未来への行動を起こしてほしいです」
30分のセッションでしたが、文字どおりアクションへと導く力強いメッセージをいただきました。

Keyword

京橋リビングラボ

イノベーションを創発し、持続可能な社会の実現をめざすオープンイノベーションプラットフォーム。魚河岸など食文化の歴史に富むYNK(八重洲・日本橋・京橋)エリアの一角で、Future Food Instituteと東京建物が大学やガストロノミーの重鎮とパートナーシップを結び、食を中心とした社会課題の解決を目指しています。社会課題の解決を目指し、実証実験・社会実装の場である「TOKYO FOOD LAB」のほか、食を通じた賑わいづくりとコミュニケーションを促すシェアキッチンスペースである「SUIBA」などを擁し、食にかかわるプレイヤーの新たな挑戦を支援します。

TOKYO FOOD LAB

所在地
東京都中央区京橋3-6-15
URL
https://www.tokyofoodlab.jp/

日本の文脈からひも解くRegenerAction

午前の部の9組によるセッションを受け、日本ならではの文脈からRegenerActionに取り組むべく、Future Food Instituteの日本におけるシニアマネージャーである深田昌則氏、TOKYO FOOD INSTITUTE 代表理事/東京建物の沢俊和がリジェネレーションを深掘りし、クロストークが展開されました。

環境、人間、社会をよりよくする包括的な思想

さまざまな角度からのセッションを通じてリジェネレーションへの解像度が上がってきたタイミングで、両氏はあらためてこの概念について解説しました。
「リジェネレーションはゼロからプラスをつくるもの。地球と人間のウェルビーイングを実現し、環境、社会、文化、経済と、エコシステム全体を繁栄させる包括的な考え方です」と深田氏。その説明を受けて、沢は具体例を挙げます。
「環境というと脱炭素が中心という印象がありますが、脱炭素を実現しながらコミュニティを改善したり、関わる人たちも豊かにするのがリジェネレーションなんです。例えばビルの屋上で野菜を育て消費するアーバンファームを想像してください。脱炭素で物流コストも削減することができる地産地消の取り組みですが、それだけではありません。地域の皆さんがそこで採れた野菜を囲むことで新たなコミュニティを生みだしたり、2代3代と継続して野菜を栽培することでそのビル産の野菜という新しい文化を創出したりと、社会活動や経済活動まで発展させていくことを目指します」

日本的な経営哲学「三方良し」との親和性

ヨーロッパで提唱されはじめたリジェネレーションですが、日本の文脈とも相性が良いと沢は語ります。売り手と買い手の利益だけでなく、社会貢献にもつながるビジネスが信頼につながり、息の長い商いや別の利益を生みだす「三方良し」に近い概念だといいます。
「日本にもともとあった思想をより幅広い分野に発展させたと思えば、日本人にとっては意外と難しくないですよね。実現すべき目標ではなく、生き様みたいなもの。複数の企業や団体や行政が自分の立場だけではなく多様な関係者の視点を意識し、エコシステム全体を繁栄させ、豊かな社会を創造していく『共創』の概念と捉えてもらえれば。リジェネレーションの考え方は、ヨーロッパとアメリカでも異なるので、日本の文脈においてはどのような捉え方をすべきか。リジェネレーションをローカルに発展させながら考えていけるといいですね」

企業活動にも有益なリジェネレーション

ところで、企業の中でリジェネレーションへの賛同者を増やすにはどうすればよいでしょうか。両氏は「正論」で議論すべきと説きます。
「株式会社はよりよい社会のために成立したシステム。人々の笑顔を増やしたり社会を豊かにすることも企業のミッションです。それを正論で問いかけると、おのずとリジェネレーションになるのではないでしょうか」という深田氏に、沢も頷き、「リジェネレーションから生まれるウェルビーイングや社会課題の解決は、企業へのESG投資の促進や人材採用時の強みにもつながり、これからの企業にとって必要な取り組みだと思います。私たちもカンファレンスを通じて共感する人を増やしていきます」
最後に、東京のような大都市において、そこにすでに存在する経済や社会、文化、人々にリジェネレーションを組み込んだまちづくりができれば、ニューヨーク、パリ、ロンドンなどにもグローバルに展開でき、より価値が高まると指摘。当セッションの参加者はもちろん、東京から日本へ、日本から世界へと広く巻き込んで、ともに議論を深めたいと意気込みを見せました。

Keyword

ウェルビーイング

身体的・精神的・社会的に良好な状態を意味する概念。一人ひとりの生活の質や満足度に注目し、多様な選択ができる社会の実現に向けて、世界的に関心が高まっています。またオフィス環境においてもワーカーのモチベーションや生産性の向上に密接に関係することから、企業の経営課題の解決にもつながると期待されています。
東京建物はウェルビーイングをより深く検討するプロジェクトチーム「Well-being Lab.」(ウェルビーイングラボ)を発足。今後竣工するオフィスビルなどに関連サービスを実装していきます。

サントリー、東京建物の実践例とは?

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